ファクトリーサイエンティストな人 第2回:FS協会 TA 豊住大輔
2022年12月14日
- お知らせ
「ファクトリーサイエンティストな人」は、ファクトリーサイエンティスト協会(以下FS協会)の創設メンバーや理事・講師・TAをはじめとするFS協会に関わる人々を紹介するコーナーです。「ファクトリーサイエンティスト」って何?どんな人が関わっているの?という疑問や、それぞれのメンバーが「ファクトリーサイエンティスト」に込めた想いをお伝えしていきます。
第2回は、FS育成講座でTA(Teaching Assistant)を担当している豊住さんに、TAになったきっかけや、TAとしてFS育成講座について思うこと、これからのFS協会について広報の西野がインタビューしました。
(西野)まずは豊住さんの自己紹介をお願いします。
(豊住)
大分市生まれ、大分市在住です。大学時代を北九州市で過ごし、そのまま大分に戻りました。大学では公共経済学を学び、卒業後は百貨店で8年ほど務めた後、インターネットと社会の関わりをテーマにした研究所に入所。36歳の時に独立し、ファブラボ大分の運営をしています。
前職の研究所では、ネットセキュリティや情報モラルに関する普及啓発活動を主担当として入所。数年たった時に当時の理事長が「インターネットはもうあって当たり前のモノとなって久しく、今後はインターネットとモノ(ものづくり)だ」とデジタルファブリケーション、ソーシャルファブリケーションを研究テーマの一つに掲げました。その一環としてファブラボ大分を立ち上げ、ファブの世界にのめり込んでいき、2016年にファブラボ大分を譲り受けるかたちで独立したといった経緯があります。ファクトリーサイエンティスト協会理事の田中浩也先生とはこの頃(2012-13年)に出会っています。
普段はデザイン業務をやっていますが、グラフィックなどよりも子ども、学生、大人に向けて、ものづくりを介したいろんな考え方を伝えることが多いです。デザイン思考やデザイン経営といった言葉も一般化してきましたが、その構造を知識として理解するのではなく、「今までと違った方法で考えてみましょう」と、実際に手を動かすワークを行い、体感してもらいながら伝えています。
余談ですが、昨年loftworkさんの研修を受けたとき、デザイン経営的には、デザインストラテジストなどの肩書があるけれど、豊住さんは企業にとっての「Culture Maker」(=会社組織などの全体の空気を変える)だと思うと言われたんですが、この字面と響きをとても気に入っています。
(西野)ファクトリーサイエンティストのTAになったきっかけを教えてください
(豊住)
この取組に初めて参加したのは、2018年の慶応義塾大学SFCで開催された合宿形式の講座となります。そもそも、専務理事の竹村さんはファブラボコミュニティの仲間(トモダチ)で、ある時「今度合宿をやるんで、その手伝いをしてもらえないですか?」と相談を受けたのがスタートです。
開催前夜にみんなではんだ付けをしたり、3Dプリンタを研究室から運んできたり、講座が始まったらほぼ深夜まで参加者、TA関係なく試行錯誤したのを今でも思い出します。それからコロナ下になってしまい、オンライン中心となりましたが、オフライン形式もまたやりたいなぁといつも話をしています。
TAを続けているモチベーションとしては、毎回おもしろい人が集まっているということが一番だと思います。この講座に参加しているだけで面白い人だ、と思ってます。キャラクター自体が面白い人もたくさんいます。当初の想定とは異なり世代が上の方や引退されてから受講される方も毎回数名いらして、いつまでも新しいことをやりたい人が沢山いるということに嬉しくなります。
FS講座内ではスキルを伝える側ですが、僕には実際に何かのデータを取って分析するような現場がないので、受講者の方の最終発表の事例から、リアルな活用方法を僕が受け取る側になる。という相反した状況がずっと成立し、双方向に教え合いできているのが楽しいです。
FS育成講座を受講してみて、教える・伝える側にも興味が湧いた!という方、まずは相談でいいので、TA誰でもいいので連絡してください。TAをやることで、技術的なスキルアップにもつながると思いますし、さまざまな方とコミュニケーションをとることで知見も広がるのは間違いないです。TAとして一緒に活動し、ファクトリーサイエンティストを育てて行きましょう!
(西野)ファクトリーサイエンティスト育成講座の魅力は何でしょうか?
(豊住)
知りたいことを知るために必要なことは何か?というのがわかる、ということだと思います。
講座に関しても日々手探りで、かなり泥臭いことをしています。一つの課題に対して、それぞれのTAが、それぞれのスタンスで解決方法やアイデアを提供しています。このいろんな視点が混じり合っている環境が一番の魅力かなと思います。
解決方法に向かっていく道筋を一つに決めない、うまくいかなかったら横道に入っても良い、そんな価値観を知ってもらえる機会を提供していると思っています。例えば、会社や業界の風土・文化は必ず存在しています。入社したときに「これがウチだ」と言われると、どうしてもその思考がペースとなってしまい横道に気づかず、真っ直ぐにいきがちですよね。
ただ、視点を変えるために「元々の考え方を一度捨てる」という選択肢もあると思います。講座の最終課題のアイデアも、何のセンサーを使えばいいのか、に着目しがちですが、センサーを使わなくても解決できる、もっとシンプルな仕組みでもいいのでは、という可能性もあります。横道に逸れた方が良かったということもあります。着眼点を一つに絞らないでほしいです。
また、ガンガンアドバイスしてくれたり、指摘してくれたり、講座が終了してからも、ちょっと相談したいことが出てきたときにフラッと戻ってこられるというコミュニティの存在でしょうか。
例えば、先月開催されたJIMTOFの展示会場で受講生同士が直接連絡を取り合うように、気軽に連絡することができる。やはり同じ悩みや課題を持っている人が見える、話せる、会えるというのが良いところではないかと。講座はきっかけにすぎず、その後、FS仲間に相談してみようかな?ができるのが好きなところです。
各地域で(自然発生的に)オフ会をやるなど生まれてくるといいですよね。
(西野)FS育成講座をどのような方に受講してほしいですか?
(豊住)
ネットや書籍を読みながら、一通り試してみたんだけど応用ができないんだよなぁと感じている人、興味本位で何でもまずは手を動かしてみたい人でしょうか。あとは、追求する、考えることを諦めない人が良いかなと思います。
「ファクトリーサイエンティスト」という文字のイメージを意識せず、やってみたいなと思った、やってみたかったというくらいの気持ちが良いと思います。さまざまな技術が出てきていますが、今のところ魔法のように唱えればすぐに何でも可能ということは起こり得ないです。技術の裏にある小さな蓄積の積み重ねを楽しみたい人向けです。
西野:ファクトリーサイエンティストの10年後の姿をどのように描いていますか?
(豊住)
自分もファクトリーサイエンティストの一人として、期待を込めて書くと、やはり常に「今のことを追いかけ続けている」といいなと思っていますし、まとめの場所としての機能を持ち、各地に散らばっているファクトリーサイエンティストが困ったとき、自慢したいとき、いろんな時に気軽に戻れる巣のような状態が一番理想的じゃないかなと思っています。
違う会社、組織にいて、やっている仕事も異なります。けれども、何かふとしたときに、ここにいたら誰かが教えてくれるかもしれない、あるいは教えてくれなくてもいいけれど、会社でも家族でもないちょっと頼れるコミュニティがあるのは素敵ですよね。
また、前回のインタビューで代表理事の大坪さんも言っているように「ファクトリーサイエンティスト」すごいよね、という状況になっているのが理想的な気がします。
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取材担当の西野の一言
この取材は、JIMTOF2022(日本国際工作機械見本市)の会期中、会場屋外に並ぶフードトラックの脇で行いました。その前日までファクトリーサイエンティスト育成講座の講師として講座を持ち、展示会のために大分より早朝の飛行機に飛び乗り応戦にきてくださった時でした。
横道に逸れてもいい、追求する、考えるを諦めない、を自ら実践されている豊住さんは、展示会場でも受講卒業生と声をかけられ大の人気者でした。「技術の裏にある小さな蓄積の積み重ね」をたのしみたい方へ、ファクトリーサイエンティストへの扉をぜひ開いてみてください。