ファクトリーサイエンティストな人 第16回:TA 大友高行
2025年01月28日
- お知らせ
「ファクトリーサイエンティストな人」は、ファクトリーサイエンティスト協会(以下FS協会)の創設メンバーや理事・講師・TAをはじめとするFS協会に関わる人々を紹介するコーナーです。「ファクトリーサイエンティスト」って何?どんな人が関わっているの?という疑問や、それぞれのメンバーが「ファクトリーサイエンティスト」に込めた想いをお伝えしていきます。
ファクトリーサイエンティストな人 第16回はファクトリーサイエンティスト協会(以下FS協会)のTAを務める大友高行氏です。
(広報:西野)まず大友さんご自身のことを教えてください。
(大友)
普段はフリーランスのエンジニアとして活動しており、リハビリ分野の機器を開発しています。機器の実用化を目指して、助成事業(2022~2023年度Fukushima Tech Create採択他)への応募もしています。また、時々知り合いの企業から試作機の受託開発の依頼も請け負っています。2024年からは大学の研究員としてプロジェクトの手伝いも行っています。
FS協会ではTAとしてFS講座の業務に係わっています。
大学院の博士課程に在籍していたときに、ある研究テーマの実用化(リハビリ機器開発とは別です)を目指して研究開発を続けていました。その後、非常勤講師も兼務しつつ知り合いの一人親方の製造業の仕事の手伝いをすることになりました。その際に電子回路の基礎知識や基板の作製、(研究向けではなく客先向けの)ソフトウェア開発、CADによる筐体の設計、板金の加工・組立などの経験を持たせてもらいました。偶然ではありますが、そのときの仕事の手伝いやこれまでの研究で得た知見が受講生の課題と被ることがあり、いまのFS講座でお役に立てていると思っています。
(西野)最初に、大友さんがFS協会の活動に参画されたきかっけを教えてください。
(大友)
元々リハビリ分野の機器開発・実用化で活動している中で、FS TAでもある林さん、FS協会 現専務理事の濱中さんが中心になって活動をしているICTリハビリテーション研究会を知る機会に恵まれました。その後メイカソンなどに参加していく中で濱中さん達のお仕事を手伝わせて頂くようになり、その流れでFS講座を紹介されました。
IoT自体は以前から興味を持っていたのですが、いざ自分のためという視点で考えるとあまり使い道が思いつきませんでした。ですが、製造業の現場の業務改善に活用する取り組みという話を聞き、手伝いたいという気持ちを抱いたのです。ました。2023年初頭に開かれた第13回講座を受講し、その直後の第14回育成講座にJTAとして参画したのが最初です。
(西野)一人親方の製造業のお仕事を手伝っていらしたんですね。
(大友)
はい。その経験もあり、中小企業の中でも特に小規模の企業(1~2名や10数名程度の企業)へ、どのようにFSAの取り組みを導入していけば良いか、どうすればFS講座に興味を持ってもらえるかなどよく考えています。この規模の企業もIoTへの興味は持っていると思いますので、ごく基本的なIoT機器の導入で業務改善はできるはずです。
普段の業務とどう繋げていけば良いか具体的にイメージし難いのですが、例えば、今あるベーシックなFS講座のさらに入門編として、会議室で疑似的な現場環境を用意して機材はその場で貸し出し、センサで欲しいデータを測定するといった1day講座を用意したらどうなんだろうとか。行政とタイアップした講座とかできないかな、とか。そんなことを思ったりしています。
現在のファクトリーサイエンティスト育成講座は大手企業さんによる受講が増えておりそれは協会として嬉しいことなのですが、一方、もっと小さい規模の会社が楽しんでもらえるといいな、と思います。
(西野)ファクトリーサイエンティストの魅力とは何でしょうか?
(大友)
現場の人達が「自分でIoTを使って環境を整えていく」という考え方がとても良いなと思います。企業が用意する機器やサービスは当然整った良いものですが、そういった機能は必ずしも全て使われるわけではありません。昔から使っている設備じゃないと…といった場面もあると思います。そのような事情から今の環境を変えていくのが難しいという条件下で、どうやって業務を改善していくのかを考えるのは面白いテーマかもしれません。
自分も大学の研究室で実験をしていた際は、測定するためのシステムや解析方法などを工夫し、自前で構築していくことが多かったように思います。外注すればいいという発想もありますが、数百万単位の費用がかかりますよね。大学の予算や国からもらえる研究費では賄えるほど潤沢でもありません。自分たちがスキルを持ち、ここは自分たちで作ってみようと工夫するのが当たり前でした。
実は自分たちで作った方が、新しい課題が出てきてもなんとかできるとも思っていました。スクラップ・アンド・ビルドを繰り返しながら、方法を模索する。そうした中で、最終的にはいい研究テーマや課題や論文につながったという自身の実体験があります。「誰かから与えられるだけでなく、自分たちで必要なものを作り、使う」という姿勢を広めていくことはとても大事だと思います。
(西野)どのような方にファクトリーサイエンティストの講座を受講いただきたいでしょうか?
(大友)
ヤマザキマザックさんなどの大手企業をはじめ、中小企業でもFS講座を受講される方が増えてきていますが、ものすごく規模の小さい企業ではまだ認知が進んでいないかなと思います。そのような企業にFSA育成講座を勧めたいです。ITツールを使うにしても、メーラーの設定までで止まっているような企業もあります。FSA育成講座でIoTの使い方をマスターしたら、より高付加価値な仕事を作ることができるのではないでしょうか。
また、大学とか高校で、製造業の現場を模した環境でIoTを使った業務改善を授業として考えてみるのも面白いかもしれないですね。会社で抱えている課題と似たような課題を学校現場でも見つけられるかもしれません。理系の卒業研究では小さなツールを自作して使うこともあります。製造業の現場との距離が近づけると、より製造業の現場でのIoTも進むような気がします。
(西野)FS協会の10年後、ありたい姿についてお聞かせください。
(大友)
ありたい姿、とは少しずれるかもしれませんが…。製造現場の中で、ちょっと困った事とかが起こった時に、「あ、それならセンサを使って解決できるよ」と言ってくれる人が身近にいる__そんな場面が当たり前になったら良いなと思います。FS協会は、*GitHubのように多くの製造現場が抱えるちょっとした困り事の解決方法やコツを共有する場になっていくのではないでしょうか。
FS協会が、お互いの持っている知識やノウハウを共有できる世界になっていくとより活性化し、製造業以外の世界にも広がっていくと思います。
さらに、もしかしたら、そんな製造現場の実際の様子を大学や高校などにも共有し、企業が欲しいちょっとしたツールを学校の学生が課題として取り組んで作ってみる、さらには、産業と教育の間を取り持つ立場になっていく役割をFS協会が担うようになるかもしれません。
*GitHub:
ソフトウェア開発のプラットフォーム。プログラムのコードを複数の人たちと共有したり、プロジェクト管理しながら開発できる。SNS機能も持っているので、自身が作成したプログラムのコードを他の人たちに共有することもできる。
取材担当西野の一言
2024年11月に東京ビッグサイトで開催されたJIMTOFで大友さんとご一緒しました。ヤマザキマザックさんの展示コーナーでファクトリーサイエンティスト協会のブースを設置いただいたのです。来場者お一人お一人に合わせた丁寧なご説明がとても印象的でした。
FS協会が月1回開催するコミュニティ活動「FSツキイチ勉強会」では技術的であるが噛み砕いた分かりやすい説明に定評があるそうです。全国に広がるFSコミュニティでは、ファブラボ品川の濱中さん、林さん、そして大友さんに今後もぜひ活躍していただきたいです。