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ファクトリーサイエンティストな人 第18回:TA 鈴木敦文氏

2025年03月19日

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「ファクトリーサイエンティストな人」は、ファクトリーサイエンティスト協会(以下FS協会)の創設メンバーや理事・講師・TAをはじめとするFS協会に関わる人々を紹介するコーナーです。「ファクトリーサイエンティスト」って何?どんな人が関わっているの?という疑問や、それぞれのメンバーが「ファクトリーサイエンティスト」に込めた想いをお伝えしていきます。

ファクトリーサイエンティストな人 第18回はファクトリーサイエンティスト協会(以下FS協会)のTAを務める鈴木敦文氏です。

(広報:西野)本日はありがとうございます。まず鈴木さんのことを教えてください。

(鈴木)
学生時代は機械工学科を専攻していましたので、そこで製造業について学び、卒業後はシステムやweb分野のエンジニアとして働いていました。

3年半前に出身の神奈川から北海道に移住してきました。栗山町という札幌から1時間ほど東に位置するところで約3年、現在は札幌市に住んでいます。

(西野)ファクトリーサイエンティスト協会に参画されたきかっけは何でしたか?

(鈴木)
FS協会の専務理事である竹村さんから、講座をご紹介いただいたのがきっかけでした。ファブラボ鎌倉でファブアカデミーという約半年間のファブラボの講座の受講前のプレイベントの時に竹村さんが偶然いらっしゃったんですね。2022年ごろです。その時にFS協会の活動も知りました。

ご紹介していただいた当時から、IoTを活用したプロトタイプを作成し、製造現場のリアルな課題解決をする実践的な内容にとても惹かれたため、ぜひ受講をしたいと思っておりました。

それから約1年後に、第15回講座(2023年9月)を受講させていただいたところ、現場での課題解決に直結する内容で大変興味深く、ありがたいことに、そのまま次の講座からアシスタントTAをさせていただき、今のTAの活動をさせていただいております。

(西野)普段のお仕事について教えていただけますか?

(鈴木)
先ほど少しお話した通り、以前は北海道栗山町にあるFabLab栗山で働き、農業IoTのプロトタイプ開発を通じて地域課題を解決する仕事をしていました。具体的には、遠隔で農地の状況を確認するデバイスを作っていました。

現在は札幌市に拠点を移し、IoT企業でエンジニアとして働いています。今後は製造業や街のインフラの様々なところでAIやIoTを活用して課題解決をしていきたいと思っております。

(西野)FabLab栗山では具体的にどんな地域課題解決の仕事をされていたのですか?もう少し詳しく伺ってもいいですか?

(鈴木)
まず、FabLab栗山は行政主体の数少ないファブラボです。行政が入ることにより、イベントやお金を出してくださることがあるので運営できているという部分もあります。

1年目はファブアカデミー、ファブラボの研修みたいなことを協力隊の活動の一環でやらせてもらい、そのあとは自分自身でテーマを決めて栗山町の課題解決をしていました。北海道は農業が主管産業なのですが、一番需要がありそうで深そうな分野でもあるので農業におけるIoTをテーマにしました。

様々な実験をしていたのですが、協力してくださる農家さんを見つけて、農地にデバイスをセットさせてもらったり、作物の1年分のデータを取らせていただいたりしていました。

北海道では農業現場と家が離れている「通い農家」が多いので、「通い農家による遠隔監視」をテーマにして、温湿度センサやカメラを設置したところ遠隔で現場の様子がわかるため、現場に行かなくても状況がわかり、生産性が上がったとおっしゃってくださいました。この時は実験的に作ったわけですが、既存のソラコム(※)のサービスを今もその農家さんで活用いただいています。

※IoTを活用した通信やクラウド、AIなどのサービスを提供する企業

新規就農者さんの課題解決のため、フィールド調査をしている様子

(西野)ソフトとハード両面に興味があるのですね。

(鈴木)
そうですね。Web分野も好きなのですが、IoTは広義の意味では幅広く、製造からインフラ周りもあります。どの企業の課題解決にも生かすことができ、特に、製造業では間違いなく現場で活用できます。IoTが持つ課題解決の一連の流れに興味を持っているんです。

今勤めている会社はAIoTに取り組んでいますが、IoTとAIもすごく相性がいいと思っています。

(西野)鈴木さんにとってファクトリーサイエンティストの魅力とはなんでしょうか?

(鈴木)
私は比較的最近からTAとして活動させていただいておりますが、以前からいらっしゃるTAの皆様が大変丁寧に資料をまとめてくださっており、回を重ねるごとにアップデートされていくため、協会全体で知識のデータベースが増えていく感にとても魅力を感じます。

最近では、受講された方が1,000名を超えて、講座内で最終課題のご質問があった際に、過去の受講生の類似の課題の解決例があることが増えてきております。そのため様々なユースケースをご紹介できております。解決策がどんどん蓄積され、TAとしてはどの角度からも対応できる、10年あとには確実にそうなっていると感じます。

受講生の皆様の最終発表はとても興味深い内容のものが多く、現場にいる人しか気が付かないリアルな課題や面白いセンサの使い方など、講座の5回目の最終発表はとても興味深い内容です。

(西野)講座で受講生の方と接する中で、印象に残っているエピソードはありますか?

(鈴木)
受講生の方がIoTのセンサを使う時に実に多様な使われ方をされているなと感じます。一つのセンサも考えようによって様々な使い方ができます。

以前の発表例ですが、会社のカードキーをどこに置いたか忘れないために、温度センサで管理された方がいます。冷蔵庫に温度センサを入れて、温度センサとキーを紐づけておくことで、低温度であればキーが冷蔵庫にあることがわかる。
あるいは、荷物を受け取る際に、ご自身の机と現場が離れていため、光センサを使って、ものがおかれた際にセンサへの光が遮られ、届いたとわかる仕組みを治具込みで作るなど。 頭の体操にもなり、発想力を養うことにも活用できそうです。

(西野)FS育成講座をどのような方に勧めたいですか?

(鈴木)
まずは、入口として「仕事をもっと効率よくしたい」「身の回りを楽にしたい」と考えている方にとてもおすすめの講座です!プログラミングやクラウドを使うのが初めての方でも、自分自身の現場の課題解決に落とし込んで学べるため、とてもイメージしやすいです。

受講後も毎月オンラインのコミュニティ内で学んでいることを発表できる場もあるため、長期的に学習を継続していきたいと思っている方にも大変おすすめです。

製造現場の方にはとても相性がよく、工場に勤務されている方には間違いなくですが、デスクワークの方も「効率化していきたい」という方にはどんな方にもおすすめします。

(西野)最後に、FS協会の10年後、ありたい姿についての期待を教えてください。

(鈴木)
今から10年。今のITの進化速度は恐ろしく早く、正直10年先を想像できないですが、長期に継続していければ大量の知見が揃っているのは間違いありません。AIも入ってくるでしょう。最近のAIの進化も目覚ましいです。AIを搭載したマイコンを安価に購入できたり、AIの画像認識もかなり安くできるようになりました。

日本の製造業の多くの方達が今より「ファクトリーサイエンティスト」という言葉を知っていて、現場の課題解決の大量の知見のデータベースになっているという状況になれば嬉しいです。そのためにFS協会の一員として、私自身も現場の課題解決に役立つ知識などを共有して貢献していきたいと思います。

何より大切なのは、データをしっかり活用して「本当に生産性が上がった!」と実感できることですので、10年かけて知見をじっくりと積み上げていきたいと思います。

取材担当西野の一言

折り目正しく、勉強家。質問すると折目正しく丁寧な物腰で、ゆったりと話し始めた鈴木さん。実は、今回が初めてのZoomでの対面でした。

鈴木さんは、エンジニアとして社会人生活をスタート。IoTは製造業にとどまらず、どの業種でも活用できる。その可能性の広さに、興味が尽きないと語っていました。以前は北海道で、農業分野におけるIoT活用に携わっていたそうです。

地域の課題解決においてもIoTは非常に相性が良い。生産者の方々のお困りごとを、丁寧にヒアリングする姿が目に浮かびました。また、AIとIoTを組み合わせた『AIoT』への関心についても、お話しいただきました。 テクノロジーの可能性と、人にしかできないこと。その両者を生かすべきことを、鈴木さんのお話を通じて改めて実感しました。